私がパニック障害を発症した当時、パニック障害という言葉さえ知りませんでした。病気であるという事実に「気付くこと」の大切さを実感した体験談です。
はじめてパニック発作を経験したのは、確か小学5年生になった頃でした。当時は週に数回、アトピーの治療のため皮膚科にバス通院していました。ある時、一人で込み合ったバスに乗車中、突然原因不明の息苦しさに襲われたのです。はじめは我慢していたものの、「息が上手く吸えない!」という感覚が次第に強くなり、時間が経つにつれ手足が痺れてきてこのまま死んでしまうのではないかという恐怖を感じました。しかし、知らない人に助けを求めることもできず、混乱しながら途中下車し、なんとか歩いて自宅に帰るなかで自然に症状は治まっていたのを覚えています。
それからバスに乗るたびに同じような発作が起きるようになり、さらには学校から帰った後30分ほど、ほとんど毎日息苦しさを感じるように。肺か何か、重い体の病気なのだろうかと不安に思いつつも、親に病院に連れて行かれて入院や手術になんてなったらどうしよう……という子供ながらの恐怖心から、誰にも相談する事は出来ませんでした。当時はインターネットで検索すれば、情報を得られるような環境ではありません。自分の身に起きていることが唯事ではないという恐怖に耐えながらも、その正体が分からないまま少しずつ発作の頻度は減り、幸い半年経つ頃には完全に症状は消えていました。未だに原因は不明です。
中学生の時、体育の授業中に友人が突然息苦しさやめまいを訴えたのです。何か覚えがあるような……そう思いながら自分が彼女に付き添って保健室に行くと、養護教諭が「過呼吸だね」といって、友人にビニール袋を渡し、口に当てて息をするように指導したのです。ペーパーバック法という対処法です。そして、パニック障害とは何かを説明するのを傍らで聞きながら、自分が数年前に体験したものがまさしくそれだったのだと確信しました。
もし自分がパニック障害を発症していた時、その正体を知っていたら、半年もの長い間苦しまずに済んだのではないかと思います。パニック発作はまた発作が起こるのではないかという「予期不安」を感じることで症状がより重く、繰り返すようになると言われています。逆に言えばそれが他の身体的な病気でないと自覚し、苦しい症状が出ても必ず治まるから心配ないというように、ある意味開き直って構えていたほうが良いのでしょう。
実際、今も私は年に1度くらいの頻度で発作を起こしますが、パニック発作だと分かっているので「あ、またか」と落ち着いて対処ができます。もちろん渦中の苦しさに変わりはありませんが、心構えが全く違います。また、色々な精神疾患があることを本人だけでなく、周囲の家族や友人が知っておく事で、症状に悩んでいる人がいたら気付かせてあげることは、とても大事なことだと感じています。
30代女性。広汎性発達障害の2次障害としてうつ病を発症し、療養を続けながら自分なりの社会復帰と自立を目指しています。