友人は成年後見を専門とする行政書士をやってますので、その苦労話をちょっと公開します。
成年後見とは、自身で生活の管理ができなくなった人が、後見人と呼ばれる人に管理してもらうという制度です。管理してもらう側(以下、被後見人)の話はよく聞くとは思いますが、後見人の苦労はあまり知られていないところでもあります。
被後見人がグループホームなどに入所している場合、あくまでも「法的な仕事をする」のが後見人の仕事です。入所費用、その他の諸費用を被後見人に代わって支払い作業をします。
しかし、仕事内容の線引きは難しく、近くに被後見人の親族がいない場合、病院の送り迎えや介助、日用品の買い物などをしなければならなくなってしまうケースも実際にあります。「先生、ちょっと被後見人さんの寝巻の換えを持ってきてくれませんか?」なんて言うのも日常茶飯事。休みの日のはずなのに、寝巻とついでの日用品を購入して施設に届けて、ついでに介助のお手伝いをしてきたりして……。本来ならすべきところではないものの、やはり「日常生活の面倒を見てしまう」のが後見人です。
後見人の仕事のメインは、やはりお金の管理です。銀行や郵便局に行く回数も多く、行政書士をやっている私の友人が、今の住まいを郵便局と銀行の徒歩圏内に決めたのもそういった理由です。
荷物を送ったり、その足で銀行へ行ったり、そのまま被後見人の施設に行ったりとかなり忙しい毎日を送っているため、被後見人の通帳と印鑑を持ち歩くことも多々あります。
そのため、おしゃれは二の次。どんなにかっこ悪くても、大きなウエストポーチを身につけて、さらにショルダーバッグは前に抱えて、自分の目の届く「前」に持っています。
さらに「私はお金を持ってません。襲ったって無駄です」的なダサい格好をして、業務をこなします。
それは当然、命に代えても被後見人の財産を守るための対策です。決してセンスが無くてダサいわけじゃありません。
実は後見人は、被後見人が亡くなった場合、葬儀まで執り行います。通常は死亡届提出、火葬、埋葬までですが、親族がいない場合は、後見人がそのすべてを一人で執り行うことになります。
やはり被後見人になられる方は、高齢の方がほとんどなので、月に2度3度と葬儀を執り行うことも少なくありません。やはり人の死に立ち会うのはなかなか辛いものです。
死亡診断が出て、24時間が経ち、直接火葬することを「直葬」と言いますが、参列者の誰もいない火葬をの時間を過ごすのは、一人の人間として、心が痛みます。
施設に入らず、独り暮らしをしている認知症の被後見人も少なくありませんので、家庭訪問は月に2回は行います。
後見人は、家庭訪問をした際、部屋の中から出てきたカビの生えた羊羹をティッシュで包んでサッと片付けたりすることもあります。また、後見人のことを自分の子供だと思いこみ、子供の名前で呼ばれ続けることもよくある話です。
後見人はただ法的なことを代行しているだけではなく、被後見人のよき理解者であり続けるのも仕事の一つなのです。
私は特定疾患、いわゆる難病と言われているSLE(全身性エリテマトーデス)、MS(多発性硬化症)患者です。
防災士でもあり、災害時の障害者対応などに力を入れています。