10年ほど祖父の看護をした末に、自らも認知症になってしまった祖母。その祖母は今、施設に入所し、私たち家族が介護しています。
私の父は長男で、祖母は父を溺愛していました。祖母には「大事な息子を盗られた」という気持ちがあったようで、母は祖母に嫌われていました。
実際にはちゃんと招待したのに、祖母は「初孫の七五三に呼んでもらえなかった」と親戚の人に言いふらしたりするなどして、母のことをいじめていたようです。
母と祖母の関係がうまくいっていないことは、私も幼い頃から気がついていました。
祖父は80歳過ぎても、銭湯のボイラー技師の仕事をしていました。
そんな元気な祖父が白内障を患い、仕事を辞めることになりました。祖父の認知症が始まったのは、それからでした。祖父と祖母は二人で暮らしていて、祖母は祖父が亡くなるまでの10年ほど介護をしていました。
祖父が亡くなり、「せいせいしたわ!」と明るく冗談を言う祖母の姿を見て、当時の私は安心していました。
ところが、祖父の面倒を看る必要がなくなり気が抜けたのか、今度は祖母が初期の認知症になっていたのです。
父には弟と妹がいますが、祖父が亡くなるまでは頻繁にお金の無心をしていました。にもかかわらず、祖母が認知症になった途端、祖母のところに顔を出す機会がどんどん減っていったのです。久々に来たかと思えば、祖母を叱って、身の回りのことは何もせずに帰るだけでした。
母はそんな祖母を見かねて、週3回電車で10分・バスで20分の距離を通い、祖母の身の回りの世話をするようになりました。そんな生活が5年ほど続きましたが、とうとう祖母ひとりでは生活できない状態になり、現在は私の実家から歩いて15分ほどの施設に入っています。今でも、事務手続きや祖母の様子を見に、週に1回は祖母のところに行っています。
あんなに仲が悪かった母と祖母も、今では本当の母娘のようで、「○○さん(母の名前)がいてくれてよかった」「いつもありがとうね」と祖母が涙を流すところも見ました。
お金がある時は周りに人が寄ってくるものですが、そうではなくなった時に、実の子どもたちでも平気で親を見捨てる人もいるのです。
私自身も結婚して義理の両親がいますが、果たして自分が将来そこまでできるのだろうかと思います。
介護自体、とても大変なことです。周りの方々の力がないと、ひとりではできません。母は以前も今も楽しそうに祖母の元に通っています。誰かひとりが過度な負担をするのではなく、家族や施設の方の力も借りながら、みんなで助け合って介護できるようになればいいと願っています。
家族、周囲の協力なくして、介護をしていくことは難しいですね。