義足 というものを初めて見たのは結婚してからでした。
夫の父が事故で片足を切断し、義足 生活をしていました。
結婚生活の中で義父を見ていて、バリアフリーの必要性を実感したお話をしようと思います。
義足 の義父。
結婚する時、それをとても気にしていたと聞きました。
結納の席でも片足を伸ばして座ることにとても躊躇したそうなのですが、結納はホテルの和室で行われました。
今思うと、和室で床の間がある部屋に、テーブルを運び込んでもらい、椅子で対応できなかったものかと思います。
事故で片足を無くしたのは30代後半になってからと言います。
それまで自分の両足で歩いていたのがいきなり片足がなくなり、体が自由にならないストレスで周囲に当り散らしたこともあるようです。
義父は家の中では義足 は使わず、膝で歩いていました。
お風呂に入る時、バランスを崩してお風呂のドアに手をつき、そのままガラスを突き破って外れたドアごと倒れ、血まみれになるという事件が起きました。
家の中はバリアフリーになっておらず、段差でバランスを崩したのです。
せめて壁に手すりがついていれば結果は違ったのかもしれません。
転倒が義母のいる時でよかったと思います。
もしいなかったら、自分で起き上がることはできなかったでしょう。
考えただけでもぞっとします。
そのぞっとしたことが現実に起こってしまいました。
義実家は市外から車で1時間弱の田舎町でした。
冬になると積雪も多く、除雪体制も整っていません。
義両親は揃って自宅から数分のところで働いており、徒歩で通勤していました。
吹雪の日、夕食の準備のため、義母は急いで帰り、後から義足 の義父はゆっくりと帰ります。
その途中でバランスを崩し、転倒してしまいました。
義足 の体で転倒すると立ち上がることは困難です。まして積雪の足元ではどうにもなりません。
吹雪の中、その場に座ったままの状態が2時間程続きました。
義母は残業しているものだと思っていたそうです。
吹雪の田舎町の夜。
通りかかる人など滅多にいません。
運よく通りかかった車の方に助け起こされて自宅に送ってもらいました。
身体障害者にとってバリアフリーは必要不可欠ですが、こうした突発的に起こる事故には自分で対応できないのも事実です。
義足をつけて暮らしていた義父を見て、バリアフリーの必要性を考えさせられました。