介護と聞くと、皆さん「お年寄りを介護する」ことをイメージすると思います。しかし現実はお年寄りを介護する人も『お年寄り』の年齢である事が多いのです。
私の祖母は、85歳で認知症を発症しました。同居していた母は当時65歳。定年退職し時間的にも体力にも余裕があった為、ペルパーの資格を取得し自宅での介護生活を始めました。通院治療のおかげで認知症の症状も数年はゆっくりと進行していましたが、88歳位から排泄を失敗するようになると同時に、昼夜問わずの徘徊が始まりました。
祖母は元々病気知らずで足腰がしっかりしており、認知症を発症する少し前までは介護など無縁だと家族は感じていました。しかし、祖母のように身体はしっかりしていても無情にも脳には突然に老いが襲ってくるのです。認知症も進行すると、食事をする事や生活の介助も拒んで、一番身近な家族でさえ相手が誰であるかわからなくなります。祖母は時に母に対して他人だと怯えて世話を拒絶し、無理強いすれば暴れ抵抗し徘徊するようになってきました。
その頃、既に70歳近くになっていた母は、自身が高齢者の域に突入し介護生活も心身に負担が大きくなってきていました。「ばあちゃんが突然姿を消したけど、膝が悪くて歩けないから探して」「心臓が悪くて…ばあちゃんの世話、今日だけお願い」等と母からの電話の回数も日に日に増えて来ました。出来る限り手助けしていましたが、母が倒れ救急車を呼んだりする事が続き、私も妊娠していた為往復二時間かかる実家へ簡単には行けない体調になり、いよいよ祖母の子供である叔父達にも相談した結果、叔父達は老人ホームやグループホーム等利用し母への負担を減らす事を提案してくれました。
母はヘルパーの資格を活かし、町内の施設に事情を話し研修見学という形で施設選びをした結果、実家から車で5分の距離で、個室入居・深夜も病院との連携が取れているアットホームな雰囲気のグループホームへの入所を決めました。始めは拒否していた祖母もデイケア通園で慣れ、叔父達の説得もあり入所しました。 施設生活に慣れて、祖母も次第に笑顔を見せてくれるようになりました。最初は入所させる事に罪悪感のあった母も、自宅では万全に出来なかった衛生面の世話も施設ではしっかりしてくれる事などを見守るうちに「これが、ばあちゃんにとって最善なのよね」とホッとしたようです。そして、母にも穏やかな日常が戻ってきました。
現在介護が必要な高齢者がいる世帯のうち、介護する側も65歳以上の老老介護は5割を越すといいます。長寿命化に加えて世帯高齢化が進むにつれ、老老介護はいずれ他人事ではなくなってきます。そんな時にたった一人で抱え込まないように出来る家族や社会でありたいと願うものです。
本人が元気なうちに、介護が必要になった時の希望等を話し合いましょう。