長い間離れて暮らしていた父方の祖母が、急に私たちのところに帰ってきたのは、私が小学生の頃でした。
そんな祖母が、生活保護を受けることに……。
父方の祖母は、長い間私たちとは離れて生活していました。
定期的に住んでいる街の名産品などを送ってくれたりしてくれてはいましたが、私が産まれてから小学校に入る前までは一度も祖母に会ったことはありませんでした。
そんな祖母から突然「帰るから!」と連絡がきたのは、私が小学4年生のときでした。
家族とは離れ離れだったものの、自分なりに日々の生活を満喫していた様子の祖母が、どうして突然帰ってきたのか……?
そのことは、家族皆の謎でした。
でも、祖母から話を聞いて、すぐに謎は解けました。
なんと!糖尿病を患っていたのです。
インスリン注射が不可欠になり、あまり調子も良くなかったのでしょう。
家族の元に帰ってきた理由は、糖尿病の発症でした。
帰ってきた当時、祖母はすでに高齢でしたし、糖尿病を抱えて働ける状態ではありませんでした。
もらえる年金も少なく経済的に苦しい状況だったので、家族で話し合った結果、一人暮らしではなく、娘夫婦と同居することになりました。
ところが、おおらかな性格の祖母とすごく生真面目な性格の長女の旦那さん。
対照的な性格の二人は合わなかったようで、同居後しばらくして祖母は一人暮らしすることを考えるように……。
収入のない祖母は一人暮らしをするために、生活保護を受けることを思い立ったのです。
私の母と末娘(私とっては叔母)に助けを求め、一緒に生活保護の申請をしに市役所へ行きました。
そこで、担当職員に事情を話したところ、一人がダメでも残り二人の子供のうちのどちらかと同居できる余地があるとのことで、生活保護費の受給を断られてしまいました。
私の母と叔母は、それぞれ同居できない事情を細かく話したといいます。
その結果、生活保護費を受給できることになり、晴れて祖母の一人暮らしが実現しました。
買い物が大好きだった祖母に大事な生活保護費を無駄遣いさせないよう、叔母は支給された額を全部渡さずに少し取って貯めておいたとか。
引っ越し先のアパートには、生活保護を受けている人も多く住んでいました。
仲良くなったご近所さんと話しているうちに、皆自分よりも高い額を支給されていると知って、そのことを叔母に話した祖母。
それでも、叔母は生活保護費を少しずつ貯めていることは最後まで内緒にしていました。
それにまったくもって気づかないところが、ある意味では祖母の良いところだったのかもしれません。
ずっと離れて暮らしていたので、今は亡き父方の祖母との思い出は残念ながらほとんどありません。