今から10年以上前、96歳の時に老衰で天寿をまっとうした母方の祖母。祖母らしい静かな最期でした。
祖母には私の母を含めて4人の子供がいましたが、長男を若くして亡くし、残りの3人は全員女の子でした。末っ子(私にとっては叔母)夫婦は祖母としばらく一緒に住んでいましたが、後は皆お嫁に行き離れて暮らしていました。ですが、末っ子夫婦は子供が独立してしばらく経った頃、離婚することに……。その後も色々あって、祖母と叔母は別々に暮らすことになりました。
以来長い間、一人暮らしを続けていた祖母。孫の私も成長するにつれて、日々の生活が忙しくなり高校生までは月に1~2度電話で話すくらいでした。そのうち、叔母の元に祖母から頻繁に「ちょっと来て」との連絡が入るようになったのです。元々、膝に水が溜まりやすかった祖母は、膝の不調の度に叔母を呼ぶようになっていきました。「頻繁に行き来するのは大変だし、高齢なこともあり一人にするのは心配」と、叔母はその時すでに90歳を過ぎていた祖母を自分の家に連れてきて面倒を見ることにしました。
叔母の家に引っ越してきて間もなくのことです。祖母に異変が起きました。「窓の外で誰かが、こっちを見てる!」と言っては、カーテンを閉めるようになり、さらには叔母のことが誰なのか分からなくなることが時々あったようです。
最初はまだらボケでしたが、認知症の典型的な症状である妄想が次第にひどくなる中、パートに出ていた叔母は自分の留守中に万が一何かあったらと思い、月に1週間ほど介護施設のショートステイに預けようと考えました。そして、選んだのは歩いて行ける距離にある有料老人ホームでした。
パート勤めをしていた叔母の負担軽減のために決めたショートステイ利用でしたが、祖母にも少なからず良い刺激になったようです。入ったのは大部屋。認知症の症状が進み、普通にコミュニケーションすることは難しくなってはいたものの、他の利用者や施設スタッフなど、周りには常に誰かいる環境の中で祖母なりに楽しく過ごしていたようです。
家にいると、日中は1人で過ごさなければいけないので、介護施設のショートステイを利用したほうが寂しくないですからね。幸い徘徊はせず周囲の人に迷惑をかけることもなかったようで、叔母も安心して預けることができたと言っていました。介護施設にいることで、緊急時の対応をきちんとしてもらえますし、祖母と叔母の双方にとって、良い選択だったのではないかなと思います。
遠く離れて暮らしていた祖母のことを今も時々思い出します。