私は防災士として活動しています。でも、消防士や救急救命士のように、何か特別な権限を与えられているわけではありません。
防災士の活動内容は幅広く、その知識を生かして仕事につなげたり、災害が起きたらすぐに駆け付ける実動部隊もありますし、情報をやり取りする団体があったりと様々です。もちろん、資格だけとって何もしない人もいます。
私の場合は、社会福祉協議会の災害ボランティアセンターで、ボランティアリーダーをしていますが、障害者防災に至っては全くと言っていいほど活動内容に入っていません。さらに災害ボランティアリーダーと呼ばれる人たちも、残念ながら障害者に対し、全く理解はありません。いわゆる「ただの一般人」だからと言えるでしょう。
防災関係のセミナーや会合には多数参加しておりますが、どこに行ってもいわゆる「災害弱者」に対する見解や意見は全くと言っていいほど出ません。今の防災というものは「健常者のものであって障害者にまで手が回らない」というのが大きな理由です。防災士やボランティアリーダーとか偉そうに言っても、「障害者」を知らないのです。むしろ「面倒なもの」としてとらえている人が多くいるのが現状です。
実際、東日本大震災では、障害を抱えた人たちが、周りに迷惑になるからと崩れかかった自宅に戻ったり、トイレを我慢して体調を崩したり、心に傷を負ったり、さまざまな二次被害を引き起こしてしまったケースも多数ありました。
報道では震災の綺麗な部分しか公開されないため、「大変だったね」「可哀想だね」という言葉が飛び交っていますが、被災地の地上に降り立って、生の現場は健常者には炊き出しは回っても、障害者はもらえない……なんて当たり前にあります。
「障害者は、保護者に保護してもらってください」というのが自治体の答えでした。
さて、防災士は先にも申し上げた通り、何か特別な権限を与えられているわけではありません。その知識を生かす生活をするのが私たちの仕事だと思っています。
持ち物は笛、ペンライト、成人用オムツ、ガムテープ、救助ロープ、軍手など、一般の人にとって普段持ち歩くのにはあり得ないものばかり持っています。当然、自分で使う用のものありますが、だいたいは災害弱者への対処用です。
また、これも普通ならあり得ないことだと思いますが、エスカレーターに乗る時は、まずお年を召した方を先に乗せ、後ろに乗る人はいないと確認したら、片足を1段上にあげ、前のめりに踏ん張ります。いつ地震が起きて、停電でエスカレーターが緊急停止してもいいように、いつ前にいる人が倒れこんできてもいいようにスタンバイ状態にします。
いつ起きるかわからない災害に備えて、日頃から備蓄、家具の補強はしっかりしておくべきです。いざというとき、自治体や行政、国に頼らないためにも……。
私は特定疾患、いわゆる難病と言われているSLE(全身性エリテマトーデス)、MS(多発性硬化症)患者です。防災士でもあり、災害時の障害者対応などに力を入れています。