卓球が高齢者に与える効果というのは思った以上に高かったので、驚きでした。
父は母が亡くなってからは何もすることもなく、家でただボーっと過ごしているだけでした。
このままでは本当にボケてしまうと思ったのですが、昔から体を動かすのが好きではありませんでしたし、人と接することもなかったのでこれは困ったと思っていました。
何か趣味になるようなことをしてもらいたいなと思いました。
ですが、高齢者ができることなど限られていますし、一体何をすればいいのだろうか悩んでいる時にたまたまテレビで卓球が映っていたのでこれだ!と思ったのです。
卓球でしたらそれほど一流選手でもなければ激しく体を動かすわけではありませんし、普通にやっているぶんには怪我をしてしまうという心配もありません。
特別何もすることのない父でしたが、足腰だけはまだしっかりしていましたから問題なくできそうだと考えたのです。
お金もかかりませんし、できる場所も多くて高齢者同士で楽しんでいる人も多いので交流のきっかけにもなるのではと思いました。
ある程度できるまで私が一緒にやっていたのですが、最初のうちこそ面倒くさそうにしていたものの、上達するごとに自ら積極的にやりたいと言い出すようになってきました。
それなりにラリーが続くようになり、これぐらいだったら他の高齢者とも対戦をすることができそうだなと思った時に、丁度いい老人会のイベントが開催されていたので連れて行くことに……。
さすがに久しぶりに知らない人と交流をするのは気が進まないようでしたが、実際にゲームが始まると、とても楽しそうにして対戦をしていました。
そして、意外なことに父は比較的レベルが高いようで、それなりに上手い人と当たって、ゲームを楽しんでいるではありませんか!?
やはりこのような場所だと上手い人は一目置かれますから、直ぐに周りの人たちとも打ち解けて、今では私が付き添うことなく、一人で参加をするようになってくれました。
卓球を始めるようになってから父はとても活動的になり、母が亡くなる前よりも積極的になったので良かったと思います。
何気なく始めさせた卓球でしたが、高齢者にここまで効果があったというのは勧めた甲斐がありました。
先述のように、見ている側からしても卓球は大きな怪我をする危険性というのもありませんから、安心して見ていることができますし、金銭的な負担も小さいので助かっています。
父に卓球を勧め、練習に付き合い、老人会の卓球イベントでの見守りなどの一連の出来事を通して、高齢者には体を動かすきっかけや家族以外の人と交流をするきっかけが必要だということを感じました。
卓球の良さは怪我の心配があまりない、金銭的な負担が少ないということのほかにも次のようなことが挙げられるでしょう。
まず、卓球は小さな子供から高齢者まで誰もが楽しめるところがいいです。
ルールも簡単で覚えやすく、レクリエーションとして気軽にやることができます。
さらに、適度に体を動かせるだけではなく、どの辺に球を落とせば、相手に打ち返されないかなど、卓球は頭を使うスポーツでもあります。
『頭脳派スポーツ』としても知られている卓球……
卓球が高齢者に与える効果は、この頭脳派スポーツという点も関係しているでしょう。
勝つための戦略を考えることで、脳を活性化させることができるため、認知症予防などにも効果が期待できるのではないでしょうか。
体格差に関係なく楽しめるのも、魅力の一つです。
大柄な人のほうが有利……卓球はそのようなスポーツではありません。
例えば大柄な人と小柄な人が対戦した場合でも、小柄な人が勝つ可能性は充分にあります。
医療や福祉の現場でも、卓球が注目されています。
卓球療法と呼ばれ、筋力が弱まった高齢者が簡単にできる運動というだけでなく、脳疾患がある人や身体に障害を持つ人、精神障害を持つ人などのリハビリの一環として行われています。
その卓球療法がリハビリの一環として病院で導入されたのは、1990年代のことです。
1990年代後半には、脳血管障害を抱える患者さんに対しての理学療法として、卓球療法が行われるようになりました。
現在では病院に限らず、デイサービスなどでも取り入れられ、人気を集めています。
普通の球より大きなものを使ったり、一般的なラバーラケットを使わずに長方形の木製の板を使うなど、高齢者や障害者がやりやすい工夫がされていることも特徴です。
卓球療法の場合、勝敗を競うよりもどれだけ長くラリーを続けられるのかを競います。
そうすることで、チームプレイの際にもプレイヤー間のトラブルも少なく、皆で仲良く楽しめますね。
リハビリにも役立ち、仲間と楽しい時間も過ごせる卓球療法は、ますます広がりを見せていくことでしょう。
父の練習に付き合い、自分も卓球の楽しさを改めて感じました!