介護職として働いていると、利用者さんが喜んでくれたり、真剣にその人の事を考えて対応した事がうまくいくときに感じる満足感等が、やりがいに繋がっていると感じます。
介護施設などでは毎日同じ人たちに会うので、自分の家族のような感覚になったりして、すごく親近感がわき、楽しく仕事をする事が出来ます。
ただ、どんな仕事でもきっとそうだと思いますが、良い事ばかりではありません。
介護職としての失敗談を紹介します。
介護職として私が老人ホームで働き出して2年くらい経った時に、Aさん(男性)が新しく入居されました。
そして私は、初めて入居担当者として、その方の担当になりました。
初めて担当を受け持ったという責任感と「Aさんの為にがんばるぞ!」という非常に前向きな気持ちでいた事を覚えています。
担当になると、まずはその方基本情報や生活歴などを話してもらいます。
等、話を聞きながらその方の情報を頭に入れていきます。
次に担当としてご家族に挨拶をし、その後ケアマネジャーとAさんの介護計画を考えていきます。
家族の方からは、こんな要望がありました。
上記の要望を受け、私はAさんが他者と積極的に交流して、楽しく過ごせるような計画を提案しました。
私はお茶の時間やリクレーション等、積極的にAさんにフロアで過ごすよう声掛けをしていました。
しかし、Aさんはまったくフロアには来ません。
私は、計画書通りにAさんが行動出来ていない状況に焦っていました。
「いい加減、たまにはフロアで過ごしましょうよ」
「こんな状況だと、ご家族が心配しますよ」
「とりあえず部屋から出ましょう」
こんな声かけをしていました。
今思えば、私の対応が未熟で、Aさんには申し訳なかったと反省しています。
その後、私は介護主任から呼び出され、「Aさんがあの担当者を変えてくれと言っている」と宣告されたのでした。
介護職に就いてまだ経験が浅いあの頃の私には、状況が全然理解できませんでした。
「なんで?」
「こんなにAさんの為だと思っているのに……」
そんな事ばかりが、頭の中で繰り返されました。
今では十分理解できます。
あの頃の私はAさんの為でなく、「自分の為」にAさんを居室から出したかったのです。
しっかり対応できれば、ご家族に喜んでもらえて、職場の先輩たちにも認めてもらえる……そんな風に思っていたのでしょう。
本来は、Aさんが何故居室から出てこようとしないのか考えなければなりませんでした。
何も理解してない若僧に「とりあえずここから出ましょう」と言われても、出るわけがありません。
きっと私がAさんの立場でも、「嫌だって言ってるだろ!」となりますね。
まずは担当として信頼してもらえるよう、色々話をしなければなりませんでした。
相手の事を理解する為には、自分の事理解してもらえるようにもっと話をしなければなりませんでした。
私がAさんに話した内容は、業務の事だけでしたから……。
介護主任に指導を受けた私は、自分本位な対応をしていた事にやっと気づかされました。
これが、今でも忘れられない私の介護職としての失敗談です。
その後、介護主任と一緒にAさんに謝罪に行き、再度担当として励んでいた懐かしい思い出です。
20代前半の5年間、私は介護職をしていました。
日中は身体障害者の作業所で勤務、夜間は併設のグループホームでシフト制の勤務をして いました。
重度身体障害者の介護がメインで食事、排泄、移動と大変な業務が多く、週に何回か宿直 もありました。
忙しい毎日を送っていましたが、やりがいのある楽しい仕事でした。
介護は全くの未経験で入社したので、研修はたくさん受けました。
個々で障害が違うため、介助の方法も全て違います。
当時は私も若くて不慣れだったので、車椅子やトイレへの移乗介助なども力任せに行う事があ りました。
身体を抱え持ち上げる時も、そんなに力を入れなくても出来るのに、失敗への不安からが っしり掴んでしまい、気づくと入居者さんの身体が赤くなっている事も……。
痛みを訴える事ができる方だと教えてもらえますが、言語障害がある方などは言えずに我慢 していたのでは?と思います。
ベテランのスタッフが介助すると、入居者さんもリラックスしているけれど、私が介助す ると、不安が入居者にも伝わり緊張させてしまうため、余計に介助・介護の時間がかかっ てしまう事も少なくありませんでした。
ベテランのスタッフにと比べても仕方ないと思いながらも、時間内に終わらせないといけ ない焦りや、介助や介護を早くしてあげたいという気持ちばかりが先走り、上手く行かな い事が多かったです。
やはり、そういった焦りが入居者さんも伝わってしまっていたでしょう。
仕事を始めた頃は、介護に必要な基礎的な情報はあるものの、自分自身に余裕が全くなく、 入居者さんにたくさん話しかけたり、表情を見たり、どのくらい身体の機能が使えるのか、 身体の動き方を見る事ができていませんでした。
身体の動き方を見る事は、どこかに痛みがある等の確認ができるため大事ですし、介護の 基本となる事です。
さらに、言語障害がある方だと喋る事ができないと決めつけて、本人に確認をしていませ んでした。
入居者さんの変化がちゃんと見られるようになったのは、介護職に就いて半年後ぐらい経 った頃からです。
介護職にも慣れてきて、やっと心の余裕ができたのかもしれません。
それまで周りに詳しく聞く事もできず、一人で悩みを抱え込んでいましたが、同じ職場で 働く仲間とも次第に打ち解け、色々と相談する事ができました。
以来、移乗の仕方のコツを介護者間で共有したり、情報交換をたくさんして入居者さんに 寄り添える介助・介護ができるようになりました。
入居者さんに寄り添う介助・介護ができるようになった事で、言語障害があるから何も言 わなかったり、わからない訳ではない事を知りました。
コミュニケーションの取り方を知れば、言語障害がある方ともたくさんお話しできます。
介助・介護も、本人に確認しながら行うとスムーズにいく事が多いです。
私の失敗談を紹介しましたが、職場での失敗を通し、先入観で喋らないから確認しなくて いいと思っていてはいけない、そして介護は人と人のコミュニケーションで成り立つのだ と実感しました。
一人で仕事の悩みを抱え込まず、周囲に相談しながらより良い介助・介護が広まると良い なと思っています。
介護職をしていると、沢山の失敗する事があります。
利用者さんの命をあずかり、お世話をさせていただくのに、失敗なんて本当はしてはいけません。
しかし、介護者も一人の人間ですから、誰しも失敗はある事だと思います。
ここでは、特別養護老人ホームでの私の失敗談を紹介します。
私が勤めている特別養護老人ホームでは、朝の8時には朝食の配膳が始まります。
私は、「○○さん、おはようございます」と利用者さんへ挨拶をします。
すると、意思疎通の出来る方はたいてい起床していて、挨拶を返してくれます。
ある時、私は担当ではないユニットの利用者の朝食の配膳をする事になりました。
他のユニットの利用者さんでも顔と名前は分かるものの、全員の疾患や病歴までは把握していませんでした。
介護スタッフ1名がお膳を持ち、もう1人のスタッフと一緒に施設が作ったマニュアルに沿って利用者さんの内服薬の確認を行いました。
しかし、朝食前と朝食後のどちらに服薬するのか、服薬を利用者さん本人がするのか、ちゃんと服薬できたかの確認が必要かをもう1人のスタッフに聞こうと思いましたが、そのスタッフは、不機嫌そうに次々と配膳しています。
聞きづらいのを理由に、大丈夫だろうという安易な考えと、利用者さんの「後で飲む」との返事を信じて失敗してしまいました。
その方は、認知症があった為、内服薬を飲まずに服のポケットに入れていたのです。
次の日、入浴時に服を脱ぐ際に別の介護スタッフが気付きました。
その報告を受けた私は、「失敗したなぁ」と落ち込むしかなかったです。
そもそも何がいけなかったのか……声をかけにくい雰囲気を漂わせていたスタッフに不満も感じましたが、そこはやはり最後まで確認しなかった自分が悪いのです。
あの時ちゃんともう1人の介護スタッフを引き止めて、確認すればこのような失敗は起きなかったと思います。
私が服薬介助に失敗し、利用者さんがきちんと服薬できなかったものの、そのせいで体調を崩さなかった事が、せめてもの救いでした。
中には、誤薬や服薬忘れで生死に関わるケースもあります。
介護現場は日々忙しいですが、その場の雰囲気に流されずに、利用者の立場を自分に置き換えて介護することが大切です。
今回の失敗談から、改めてその事を学びました。
時に、利用者さんが歩んできた道も垣間見える介護福祉士の仕事。
心に寄り添うケアを心がけています。