うつ病で障害者手帳なんて大げさな……。そう思っていた私が、手帳を持つこととなりました。うつ病の人が障害者手帳を持つ事のメリットをお話します。
うつ病を主訴として取得出来る障害者手帳は「精神障害者保健福祉手帳」という名前で、症状の重さによって1級から3級まで等級があります。受けられるサービスや優遇措置も等級や各発行自治体によって違ってきます。手続きの際には、役所で丁寧に申請方法などを教えてくれました。診断書の提出なども求められるのでお医者さんにも相談を。ちなみに年金とは全く別の制度になりますので、審査基準も等級も全く別物です。例えば年金が通らない方でも手帳の申請は通ったという方は沢山いらっしゃいます。
最初にうつ病と診断されたのは10代の頃でしたが、当時は私も家族も福祉制度に対する知識が乏しく、病状によっては手帳の取得が可能なことなど全く視野にありませんでした。うつ病は適切な治療と休養で早期に完治される方も多いのですが、私の場合は先天性の発達障害の二次的なものとして発症したもので、症状を抑えることはできても完治は難しい状況でした。発症から5年程経った時、転院先のソーシャルワーカーさんに申請を薦められたのがきっかけとなり、3級の手帳を取得。その後、障害者枠で就労していた時期もありました。
多くのうつ病の方は審査を通ったとしても一番軽い3級となる方が多いようです。一部の交通機関の運賃が割引になったり、公共施設の利用料減免が受けられますが、これらに正直それほど大きな恩恵はないように感じます。しかし「障害者控除」という税制上の優遇措置は、思うように働けず収入の少ない方にとっては安心に繋がる部分です。また、手帳を持っているとハローワークで「障害者枠」の仕事に応募することができ、障害者担当の職員さんの支援を受けられます。私の経験としては、一般の来所者よりも時間をかけてきめ細やかな対応してくれる印象でした。税金と就労に関してだけでもメリットは大きいです。
私にとって手帳を持つことの意味は、福祉サービスを受けられることだけでなく、もう一つありました。多くのうつ病の方は本来とても真面目な性格のため、動けなくて休んでいるとき「怠けていていいんだろうか」という不安で心が押しつぶされそうになると思います。そして、職場復帰を焦って余計に病状が悪化してしまったり……。きちんと休養するためには自分を責めない環境が必要です。手帳を持っていることは公的にちゃんと「あなたは今、病気なんだよ」と認めてもらえたという事になります。それが大きな安心感となり、私も治療に専念することができました。 最近は「うつ病は甘え」と責められがちです。真面目な方ほど障害者手帳取得の手続きをきちんとしたほうが良いと思います。そうして日常生活を送る苦しさを認定してもらったうえで、目に見えない病気だからこそ病識を持って治療に取り組む事は、大切なことだと感じています。
30代女性。広汎性発達障害の2次障害としてうつ病を発症し、療養を続けながら自分なりの社会復帰と自立を目指しています。