介護施設で働いていると、特に夜勤中は様々な出来事に遭遇します。とある夜の体験を紹介します。
介護施設で夜勤業務を行っていると、どこの施設でも必ず夜勤スタッフが一人で業務を行う時間が発生します。その時間帯はまちまちですが、時には0時から4時など、一人で暗い施設の中で活動するには怖い時間も。施設によっては、がたがたと風で建物自体が揺れたり、暗い闇の中でぼやっと何かが見える気がしたり……。怖がりの人にはつらい環境が待っています。夜間の介護業務は基本的に見守りとオムツの交換、何かあったときのための対応です。そんなに忙しいわけではありませんが、一人となると、気もはり、小さな音でも気になります。
その日、夜勤中だった私。2時を過ぎた頃、いつものように各居室に入り、オムツ交換をしていたときのことです。オムツ交換にかかった時間は約2~3分、ヘルパーステーションから離れたのはほんの数分の時間でした。
居室から出て、戸を閉めると、居室から約10メートル離れた玄関にぼうっと人影が……。最初、もう一人の夜勤者が休憩からあがったのかと思いましたが、休憩からあがるまでまだ1時間はあります。その人影はじっとこちらを見つめているようにしたまま、その場を動きません。姿を確認しようにも暗い建物の中は見通しが悪く、しっかりと影を認識しません。まさかお化けでは……。心拍数が上がり、そこから叫んで逃げたい気持ちを抑えながら、恐る恐るその影に近づいていくと……。
そこには認知症のおばあさんがシルバーカートをひいて、立っていました。そのおばあさんの部屋は、玄関から約5メートルのところにあります。おばあさんはシルバーカートをひきながら、「ああ、あなただったのね」といいながら、ゆっくりと近づいてきます。その速度は遅く、3分くらいの間に玄関先へ移動するなんて思わなかっただけに、肩の力が一気に抜けました。
重ねて、おばあさんは、「あなたの後ろにいる帽子をかぶっている人はだあれ?お友達のかた?」などと、もっと恐ろしいことを言います。認知症の方は幻覚を見ることも多く、おばあさんの話している話は病気のせいだとわかっていても、遅い時間帯なだけに、怖くてたまりません。時間を伝え、まだ外には出られないことを伝え、居室に戻って再び寝てもらったのはいいものの、怖い気持ちが抜けないまま、もう一人の夜勤者が休憩から戻るのを待たなくてはと震えながら、ヘルパーステーションでただただ時間が過ぎるのを待つということは日常茶飯事です。
介護施設での夜勤では、こうしたことが日常的にあります。私が体験した出来事のように、怖いものの正体がわかる場合はいいのですが、時には物音の原因がわからず、迷宮入りするケースも。怖いものが苦手な人はご注意を!
介護は毎日がどきどきで、楽しみながら仕事しています!